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つづろう、モノの思い出

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昔かけていたメガネの思い出

眼鏡市場で買ったメガネ。今はセブ島の沖に沈んでいる。

大学で所属していた落語研究会にはずいぶん酔狂なOBたちがいた。大喜利ハウスというOBを集めたシェアハウスを主催する人もいれば、酔狂が過ぎてニートになって大喜利ハウスに転がり込む人もいた。そのニートをフィリピンはセブ島の大喜利ハウス分室に住まわせて、生活費を毎月送金する代わりに面白いことをしろと強要するさらに上の先輩もいた。分室といってもニートを送り込む段になって貸家を借りてセブ島大喜利ハウスと名乗っただけで実質独居である。

ニートはフィリピンに着いた翌日にポーカー詐欺に遭って全財産10万円を失った。それからは毎月の仕送り3万円で細々と生き、有り余る時間を寝食インターネットに費し、熱帯の日差しが照り付ける国で肌はますます青白くなっていった。

俺がニート先輩の元を訪れたのは彼がフィリピン生活を始めて3ヶ月目のころだった。この計画の首謀者が組んだ「フィリピンで3ヶ月暮らしたニートを見に行くツアー13泊14日の旅」のメンバーとしてである。空港で出迎えたニート先輩の覇気のない顔伸び放題の髭衰えた風貌メンソーレと書かれたTシャツ。巻き起こる爆笑。

面白のピークを空港で迎えてしまった俺はセブ島の空気に一瞬で飽き、3日目にして蒸し暑いセブ島大喜利ハウスの片隅で延々とインターネットを続ける一匹の虫となった。

虫は虫なりにリゾートを楽しもうとビーチに行ってみたりはした。行ってはみたのだが調子こいて乗ったバナナボートでメガネを吹き飛ばして視力を失った。ツアーの残りの日々を俺は足元凝視でとぼとぼ歩く人と成り果て、虫度を増すだけの結果に終わった。