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リトルカブの思い出

 多くの人達が初めての原付きにスクーターを選ぶ中で、僕はこのリトルカブに乗ることになった。初めて乗るバイクというものは、たとえ原付きであろうと怖いものである。まず、バイクに近づくにつれ、自身の未熟さから不安が湧き出てきて、徐々に大きくなっていく。キックを踏み下ろしエンジンをかけ、スロットルを捻ると、緊張でいくらでも手汗が出てくるし、僅かな速度でもおっかなびっくり。体はカチコチで、交差点を曲がろうとするたびにピリピリと神経質になる。

 とにかく怖いのだけれど、スロットルを捻るとまるで羽が生えたような気分になる。それがとにかく楽しかった。1週間も走り回ると慣れて、それからいろんな場所へ行った。これまで自転車で散々通った道も、カブで走ると特別な時間になった。カブで走るということは、もはやただの移動ではなかった。周りの景色がこれまでとまるで違うように思えた。怖いもの知らずで、真冬に片道80kmぐらい走ったこともあった。今であればそんな計画を考えようとも思わない。

 その後、すぐさま中型二輪を取得し、リトルカブは下取りに出されることになった。そして大型免許も取得し、いろんなバイクを乗継いで、今に至っている。もはや馬力は120馬力のマシンとなり、初めてリトルカブに乗った時とはまるで違う世界に身をおいている。それでも、時たま懐かしのリトルカブの姿を目にすると、前に進むだけでも怖かったあの頃の気持が、今でも鮮明に蘇ってくるのである。
 

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